世界で電気自動車は増え続けている
―IEAの「2026年世界EV見通し」レポートより

世界では電気自動車(EV)の普及が加速し、販売台数は過去最高を更新しています。欧州や中国が市場を牽引する一方、日本はようやく販売比率が3%を超えた段階で、国際的な潮流との差が広がりつつあります。IEAの最新報告書は、エネルギー危機を背景にEVが石油依存を減らす重要な手段となり、各地域で普及が勢いを増している実態を示しています。
松下和夫 2026.09.02
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日本の新車販売に占める電気自動車(EV)の比率は今年の4~6月に初めて3%を超えました。比率は高まっているものの、既に3~4割前後の欧州や6割超の中国と比べると普及の遅れが際立ちます。2026年5月、国際エネルギー機関(IEA)はEVに関する年次報告書「Global EV Outlook 2026」 (※1)を発表しました。EV販売台数が過去最高を記録したことを受け、世界の自動車市場におけるエネルギー危機の影響に注目が集まっています。本稿ではこの報告書をもとに世界のEV販売状況をみていきます (※2)。

〈2025年の実績〉

 2025年に世界のEV販売台数は20%増加し2000万台を超え、新車販売台数の4分の1を占めています。

主要なEV市場で力強い成長を見せたのは欧州で、欧州連合(EU)の自動車向けCO2排出基準の厳格化を受け、EV販売は30%以上増加、総販売台数の28%に達しました。

中国ではEV販売がやや鈍化したものの、依然として総販売数の55%近くを占め、米国ではEV税額控除の終了に伴い年末に販売が落ち込んだものの、EV販売台数は自動車販売全体の10%弱と安定した水準を維持しました。

一部の新興市場ではEVの販売台数が急増し、東南アジアでは、ベトナム、インドネシア、タイを筆頭に、年間販売台数が2倍以上に増加し、販売シェアは20%近くに達しました。

ラテンアメリカでは、ブラジルとメキシコを筆頭に販売台数が75%増加しました。

100ヵ国以上でEV販売が増加し、3分の1の国では新車販売の少なくとも10%をEVが占めました。

そうした世界のEV販売台数の60%を中国自動車メーカーが供給し、欧州と北米の自動車メーカーがそれぞれ約15%を占めています。

現在、中東紛争起因のエネルギー危機により、多くの国で石油輸入依存が課題となっています。道路輸送部門が石油需要のほぼ半分を占めており、現在の危機対応が今後の世界自動車市場を形作ります。

1970年代の石油危機を契機に燃費基準が導入され、75年から現在まで、従来型自動車の燃費はほぼ2倍に向上しました。一方、新型コロナウイルス感染症期間中、多くの国がEV普及を促進し補助金を導入。その結果、2025年には世界中のEVによって1日当たり約170万バレルの石油消費が削減されました。東南アジアの一部の国では、エネルギー危機対応の一環とし、EVに対する税制優遇措置の拡大や延長を発表しています。

〈2026年の動向〉

 2026年にはEV販売シェアがさらに拡大する見通しです。 

 石油価格高騰でEVの経済的メリットが強まり、欧州では25年比で年間燃料費削減額が35%増加しました。燃料価格上昇が著しい国ではEV販売が増加しています。新興国では燃料価格への感度が高く、電動二輪・三輪車がより魅力的となり、東南アジアでは26年第1四半期にはそれらの販売が前年同期比2倍以上、インドでも30%以上増加しました。 

 26年第1四半期の世界EV販売は約390万台で前年同期比8%減でしたが、これは中国と米国の政策変更が主因です。一方、欧州は30%増、中国を除くアジア太平洋は80%増、ラテンアメリカは75%増と、多くの地域で高い成長が続きました。26年3月には約30ヵ国で月間販売が過去最高を更新し、60ヵ国で前年同月比増となりました。中国では年初来販売は前年を下回ったものの、EVシェアは過去最高の60%超に達しました。 

 26年の世界EV販売は2300万台、シェア28%との予測です。欧州は20%増で販売の3台に1台がEV、中国は伸び率が鈍化するもののシェアは60%近くに達する見込みです。中国を除くアジア太平洋は50%以上、ラテンアメリカは45%増が予測されます。中東紛争の影響で自動車市場全体は鈍化の可能性があるものの、政策次第ではEV販売が予測を上回る可能性もあります。

 EV市場の長期展望は政策と価格競争力に左右されます。新規政策なしでも、世界のEV保有台数は35年までに6倍以上となり、5億台規模に達する見込みです。CO2規制や燃費基準の強化、EVの価格低下が普及を牽引し、IEAのシナリオでは35年にEV販売シェアが50%に達します。内燃機関(ICE)車は縮小し、17年のピークには戻りません。

 中国では25年に販売されたEVの70%が従来車より安価で、小型車市場ではほぼ置き換えが進んでいます。欧州でも排出基準強化が販売を促し、35年にはEVシェアが90%を超える見込みです。東南アジアでは政策と価格低下が普及を後押しし、35年までにEVシェアが最大3倍に増加します。中国製EV輸入で価格が下がり、タイではICE車と同水準、インドネシアでも価格プレミアムが縮小します。ベトナムは国内メーカーが競争力を持ち、35年にEVシェア80%超が見込まれています。     

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ 

 石油輸入依存国にとってEV普及はエネルギー安全保障上重要な選択肢です。 

 中国は25年に日量100万バレルの石油需要をEVで代替し、30年にはそれが270万バレルに達する見込みです。世界全体では30年に日量500万バレルの削減が予測されます。電気トラックの普及も進めば、35年にはさらに100万バレルの削減が可能です。 

 国内でEV販売比率の低い日本ですが、東南アジアなどでEV普及が加速する中、日系自動車メーカーはハイブリッド車(HV)を中心に複数の動力源を活用する「マルチパスウェイ戦略」(※3) を掲げています。中国ではEV開発の競争軸が、航続距離の長さからスマートフォンや家電とつながる「生活一体型の車両」へ移りつつあります。日系の全方位戦略は「スマホ化」する中国EVに対抗できるでしょうか。

(以上は、ビジネスWEBサイト『時局』(2026年9月1日更新)の連載「地球沸騰時代の環境考」の拙稿「世界で電気自動車は増え続けている ―IEAの「2026年世界EV見通し」レポートより」)世界で電気自動車は増え続けている―IEAの「2026年世界EV見通し」レポートより― - 地球沸騰時代の環境考 - 時局を再録したものである。)

注:

※2 IEAのいうEVにはバッテリー式電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)および航続距離延長型電気自動車(EREV)が含まれる。

※3 新興国政府が電動化を進める上で、EVにだけ移行するのではなく、HVやPHV、バイオ燃料など、各国のエネルギー事情やインフラに応じて複数の技術で脱炭素化を進めるとの考え方。

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