世界の電気自動車普及の動向
電気自動車の販売は、コストの低下、技術の改善、政府の支援により指数関数的に増加してきました。世界で2024年に販売された乗用車の22%は電気自動車でした。これはわずか5年前の8倍の数字です。
各国の乗用EV総販売台数をみると中国が圧倒的で、2024年には1,130万台となっています。次いでアメリカ(150万台)、ドイツ(57万台)、イギリス(55万台)、フランス(45万台)と続きます。
国際エネルギー機関(IEA)によると、EVの販売の全乗用車販売に占める割合(2024年)は、上位からノルウェー(92%)、スウェーデン(58%)、デンマーク(56%)、フィンランド(50%)、オランダと中国(48%で同率)の順になっています。一方、アメリカは10%、日本は1.6%にとどまっています。
なお、米国の研究機関である国際クリーン・トランスポーテーション・カウンシル(ICCT)の報告書や英気候エネルギーシンクタンクのエンバーが2025年12月に発表した報告書によると、世界の新車販売でのZEV(EVとPHEV(プラグインハイブリッド車))のシェアは、2024年の21%から2025年に25%に増加し、中でもベトナムでは40%、トルコでは22%、タイでも2割を超えた、とされています。
IEAのデータに含まれていない自動車保有率が低い発展途上国の中には、ここ数年で著しいEV普及が見られる国もあります。その大きな理由の一つは、中国から輸入された手頃な価格のEVが入手できるようになったことです。例えば、エチオピア、ネパールおよびスリランカでは、5年前にはほぼEV輸入がなかったのが、2024年には輸入の大半がEVとなりました。
世界の電気自動車への移行は、中国、欧州連合、アメリカという三大自動車市場に大きく依存しており、これらは合計で世界の自動車販売の60%を占めています。
初期のEV普及のリーダーは、スカンジナビアのような高所得国や、中国のように市場統制力の高い国々でした。これらの国々では強力な政府の支援策と財政的インセンティブが、ダイナミックなEV産業の成長を促し、コストの低下を助けました。EVの経済性がより有利になるにつれて、低所得国でもEVを導入し始めています。多くの場合、中国からの手頃で高品質なEV輸入のおかげで普及しています。例えば、2024年には、ネパールとスリランカへの自動車輸入の80%以上がEVでした。また、エチオピアの首都アディスアベバ(同国の自動車のほぼすべてが集中している)では、新規登録された乗用車の60%以上がEVであると推定されています。
これらの国々では、EVの普及を促進するために野心的な政策を打ち出しています。エチオピアでは2023年末に、内燃機関車の輸入を事実上禁止しました。ネパールでは内燃機関車に高額な税金を課す一方、EVに対して手厚い融資制度を設けました。いずれの場合も、高コストで供給が不安定な石油輸入への依存度を低減することが目的でした。スリランカにはEV向けの特別な政策インセンティブはありませんが、EVが本来持つコスト競争力のおかげで、中国からのEV輸入が堅調です。ただしこれらはすべて自家用車の保有率が低い国々であるため、EVの総数は依然としてかなり少ないままです。
発展途上国のEV所有者は、停電や充電インフラの不足にしばしば直面しています。各国政府は電力網整備を計画していますが、農村地域まで電力を届けるには、さらに多くの取り組みが必要です。しかし、EVの早期導入者には、メリットがリスクを上回る可能性があります。例えばエチオピアでは、電気代はガソリン代よりも数倍も安く、EV所有者は停電に悩まされることがあるものの、供給が限られているガソリンスタンドで何時間も列に並んで待つ必要がないため、時間を節約できます。
発展途上国にとって、EVは持続可能な都市モビリティへのアクセスを拡大するための取り組みの一部であるとともに、ガソリン車という段階を飛び越え、直接EVに移行すること(蛙飛び型発展)が可能であることを示す根拠にもなっています。
EVの普及加速には、政府のリーダーシップと手頃な価格が鍵
ノルウェーや中国、その他のEV先進国での経験は、他国にとって貴重な教訓となります。政府がEVの普及を推進し、公共充電器への投資を行い、EVのコスト競争力を高める政策を実施したとき、EVの普及は加速します。そしてEVが、ガソリン車やディーゼル車よりも経済的に有利な選択肢となれば、EVの普及は急速に拡大します。特に、車両の航続距離や公共充電器への容易なアクセスが改善された場合にはなおさらです。
ノルウェーや中国などにおけるイノベーションと政策的な後押しは、世界的な価格低下を促し、他の国々でのEVのコスト競争力を高める一助となっています。しかし、気候危機の緊急性を考慮すれば、政府は手をこまねいて事態の進展を待つべきではありません。すべての国がノルウェーほど豊かであるわけでも、中国のような市場支配力や政府体制を備えているわけでもないにしても、電気自動車は多くの国にとって、経済と環境の双方に利益をもたらす可能性があります。
販売台数の100%をEVとすることを義務付ける政策は、移行を推進する最も効果的手段です。2023年時点で、カナダ、英国を含む16カ国が、2035年またはそれ以前に販売台数の100%をEVとすることを義務付ける何らかの政策を導入しています。もしEU、中国を含む多くの国が、2035年までにEV販売比率100%を目指すよう各国の規制を統一すれば、生産規模の拡大により世界的なコスト低減が図られるでしょう。これにより、インドなどの国々でのコストパリティの達成が早まる可能性があります。さらに各国はEVの所有を容易な選択肢とするため、公共充電器、特に急速充電器の数を増やすべきです。
EVへの移行は、公平に行われるべきです。政府は、自動車メーカーがより手頃な価格のEVモデルを生産するよう奨励すべきで、補助金を導入する場合は、主に低所得世帯を対象とすべきです。これは公平であるだけでなく、低所得世帯は価格変動に敏感であるため、EVの普及を促進する上でも効果的です。
日本への示唆
日本はハイブリッド車で世界をリードしてきましたが、EVでは中国や欧州に大きく遅れをとっています。ガソリン車への過度の依存はホルムズ海峡封鎖によるエネルギー危機への脆弱性にもつながっています。
今後充電インフラ整備やZEV規制などの政策面の課題に取り組みつつ、公共交通などを組み合わせた現実的移行シナリオが必要です。そして単にEV台数を増やすだけでなく「社会システムの転換」が望まれます。すなわち再エネ電源との統合(V2G[1]など)、都市計画・交通政策との連携(公共交通・カーシェアリング等との組み合わせ)、産業構造転換(雇用・地域産業への影響)といった、社会システム全体の設計が問われています。
[1] V2G(Vehicle to Grid)とは、電気自動車(EV)のバッテリーに蓄えた電力を家庭や電力網に供給する技術を指す。
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