世界平和のために日本の出来ることー100人に聞く: インタビュー
質問1.「現代の戦争は、深刻な環境破壊を引き起こしている」と述べておられますが、その意味することを具体的に説明して頂けますか?
現代の戦争な、次のような形で深刻な環境破壊を起こしています。
直接的な環境破壊――戦場そのものが「生態系の破壊装置」になる
現代の戦争は、従来の戦争よりもはるかに大規模で、長期的な環境破壊を引き起こします。代表的な例は以下の通りです。
爆撃・砲撃による土地の荒廃 大量の爆薬が地表を破壊し、森林・農地・湿地などの生態系が消滅します。ウクライナでは、数十万ヘクタールの農地が地雷や砲撃で使用不能になったと報告されています。
石油施設・化学工場の破壊による汚染 戦争では燃料貯蔵施設や化学工場が攻撃対象になり、土壌汚染・河川汚染・大気汚染が広範囲に広がります。湾岸戦争では、イラク軍が油田を燃やし、巨大な黒煙が数ヶ月にわたり中東の空を覆いました。
軍事車両による土壌の圧壊・侵食 戦車や装甲車は重く、森林や湿地を走行するだけで生態系を破壊します。これは戦闘が終わった後も回復に数十年を要します。
有害物質の拡散――戦争は「毒物の大量散布」と同義になっています。
現代兵器は、環境に長期的な毒性を残す物質を大量に使用します。
劣化ウラン弾(DU弾) イラクや旧ユーゴスラビアで使用され、土壌や水源に残留し、発がん率の上昇が報告されています。
爆薬・推進剤・燃料の化学物質 TNT、RDX、ペルクロレートなどは土壌に残留し、地下水汚染を引き起こします。
焼夷兵器(ナパーム、白リン) 使用された地域では土壌の生物が死滅し、植生回復が極めて困難になります。
これらは戦闘が終わっても数十年にわたり環境と人間の健康に影響を及ぼします。
気候への影響――戦争は「巨大な炭素排出源」です。
軍事機器の燃料消費は桁違い 戦闘機1機の1時間の飛行で、一般家庭の数ヶ月分のCO₂を排出します。 戦車、艦船、輸送機なども同様です。
軍需産業のサプライチェーンが巨大な排出源 武器製造には鉄鋼、アルミ、化学物質など大量のエネルギーが必要で、軍需産業全体の排出量は国家規模に匹敵します。
戦争によるインフラ破壊が追加の排出を生む 建物の焼失、石油施設の炎上、復興のための建設資材の大量使用など、戦争は「排出の連鎖」を生みます。
国際環境NGOの推計では、世界の軍事関連排出は全人類のCO₂排出の5%前後に相当し、もし軍事部門が一つの国家であれば「世界第4位の排出国」になるとされています。
生態系の長期的崩壊――戦争は「自然の回復力」を奪います。
戦争は単なる一時的な破壊ではなく、自然の回復力そのものを奪います。
地雷・不発弾が生態系の回復を阻害 カンボジア、アフガニスタン、ウクライナなどでは、地雷が埋まった土地が数十年にわたり利用できず、森林再生も阻害されます。
野生動物の大量死と生息地の喪失 砲撃音や火災で動物が逃げ出し、繁殖地が破壊され、地域の生態系が崩壊します。
水資源の汚染による地域社会の崩壊 河川汚染は農業・漁業を破壊し、地域の生活基盤を奪います。
これらは「戦争が終わった後も続く環境戦争」と呼ばれます。
戦争と環境破壊の構造的関係
私が強調したいのは、戦争が環境破壊を引き起こすだけでなく、戦争を支える政治経済構造そのものが環境破壊を常態化させているという点です。
軍需産業は巨大な利益を生み、政治を動かす
軍事費は世界で年間2.4兆ドルを超え、気候対策予算を圧倒
戦争は化石燃料への依存を強め、再生可能エネルギーへの移行を遅らせる
地政学的対立が国際協力を阻害し、気候危機への対応を弱体化させる
つまり、戦争は「環境破壊の原因」であると同時に、「環境危機への対処を妨げる構造」でもあるのです。
以上のように、現代の戦争は「環境破壊の総合パッケージ」となっているのです。
質問2.「 環境戦争犯罪」という新たな罪を設け、責任を追及するとのご提案をされています。このご提案の重要性を国際社会が十分に認識することになればと思いますが、このサイトへの訪問者/閲覧者にご提案のポイントを簡明に説明して頂けませんか?
環境戦争犯罪と、戦争によって引き起こされる重大な環境破壊を、国際法上の“犯罪”として明確に処罰する仕組みをつくろうという提案です。従来の戦争犯罪は「民間人への攻撃」「虐殺」「拷問」など人間への直接的な暴力が中心でした。しかし現代の戦争は、
大規模な森林破壊
河川・地下水の汚染
有害化学物質の散布
石油施設の爆破による大気汚染
生態系の崩壊 など、人間の生命基盤そのものを破壊する環境被害を引き起こしています。
それではなぜ新しい犯罪カテゴリーが必要なのでしょうか。
ポイントは次の3つです。
① 現行の国際法では環境破壊が十分に裁けない
国際刑事裁判所(ICC)やジュネーブ条約は、環境破壊を「付随的な被害」として扱うことが多く、意図的な環境破壊でも処罰が極めて難しい という問題があります。そのため、油田を燃やす、化学工場を爆撃する、劣化ウラン弾を使用するなどの行為が、事実上「責任不問」になってしまうことがあります。
② 環境破壊は“人類全体への攻撃”である
戦争による環境汚染は、戦場の国だけでなく、周辺地域、さらには地球規模で影響を及ぼします。
汚染された河川は国境を越えて流れる
大気汚染は広域に拡散する
CO₂排出は地球温暖化を加速する
つまり、環境破壊は未来世代の生存可能性を奪う行為であり、国際社会全体が守るべき「共通の価値」に対する攻撃です。
③ 責任追及が抑止力となり、戦争の暴走を防ぐ
環境破壊が国際犯罪として明確に処罰されれば、軍事指導者、政治指導者、軍需企業 などが環境破壊を伴う戦争行為を躊躇するようになります。これは、戦争の暴走を抑える新しいブレーキとして機能します。
提案の核心には、環境破壊を「許されない戦争行為」として明確化する意図があります。すなわち、「環境破壊は、戦争の副産物ではなく、処罰されるべき重大な国際犯罪である」のです。この視点を国際社会が共有することができれば、戦争による環境破壊の抑止、被害国の救済、未来世代の保護 につながります。
質問4.戦争防止のため、また、戦後復興のために日本の国家として、また、日本人として、出来ることは何でしょうか?
戦争防止と戦後復興のために、日本が果たし得る役割は大きく、しかも独自性があります。それは、以下の4つの柱に整理できます。
① 外交:対話と仲介の「平和国家としての役割」を強化する:戦争を防ぐためには「対話の外交」「橋渡しの外交」が不可欠です。具体的には以下のような方法があります。
対立する国同士の仲介役(メディエーター)になる:日本は歴史的に軍事的覇権を持たず、国際的に「信頼されやすい中立的立場」を持っています。
国連・国際機関での平和構築支援を強化する: 国連PKO、UNDP、UNEPなどでの日本の役割は大きく、さらに拡大できる余地があります。
軍事ではなく外交・開発協力を中心とした安全保障モデルを提示する。
② 環境・気候政策を平和戦略として位置づける
戦争の原因には、資源争奪・環境劣化・気候危機が深く関わっています。 日本ができることは次の通りです。
再生可能エネルギーの普及を国際協力として進める:化石燃料依存は紛争の温床になります。日本の技術・資金・制度設計の経験はアジアで大きな価値があります。
気候変動による紛争リスクを減らす支援を行う:水不足・食料危機は紛争を誘発します。 日本は水管理・農業技術・防災で世界トップレベルの知見を持っています。
「環境戦争犯罪」の国際的議論を後押しする:戦争による環境破壊を国際法で裁く仕組みづくりに、日本は積極的に貢献できます。
③ 戦後復興:人間の安全保障を中心に据えた支援
戦後復興においては「人間の安全保障(Human Security)」を重視し、以下の取り組みが望まれます。
教育・医療・水・衛生など生活基盤の再建支援:日本のODAはこれらの分野で世界的に評価されています。
環境再生型の復興支援(グリーン・リカバリー):戦争で破壊された土地・水源・森林の回復は、長期的な平和の基盤になります。
地雷除去・不発弾処理の技術協力:カンボジア、ラオスなどで日本は高い実績を持っています。
地域コミュニティの再建支援:住民参加型の復興は、紛争の再発防止に不可欠です。
④ 日本人としてできること
政府だけではなく、 日本人一人ひとりができることは次の通りです。
戦争と環境の関係を学び、発信する
戦争は環境破壊を引き起こし、環境破壊は紛争を誘発します。 この「悪循環」を理解することが平和への第一歩です。
公正な国際協力を支持する
政府の政策は市民の声で変わります。 気候政策、ODA、国際協力への支持は平和構築に直結します。
多文化共生・国際理解を深める
偏見や排外主義は紛争の温床になります。異なる文化を理解する力が平和をつくるのです。
若い世代の政治参加を後押しする
未来世代の声が平和政策を前進させます。
最後に「平和・環境・開発は一体であり、どれか一つだけでは持続可能な未来はつくれない」 という点を強調しておきたいと思います。(2026/7/7)
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